研修で事例検討を頼まれる割合が増えている。前半講義を聞いたうえで事例検討に入っていくことになるが、グループで話し合うので研修を受講するという形から研修にかかわっていく形に変わる。グループ討論や全体の話し合いを聞いていると、その会社独自の風土の一部が伝わってくる。何社も並行して関わっているととくに差を感じる。風土に良し悪しは関係がないけれど、今抱えている大きな課題がある場合はその関係性が見える場合もある。研修もたびたびするとか他の施策と一緒にするとかでさらに感じる。また、同じ規模であってもメンタルヘルスケアを導入する会社は導入しない会社に比べると人に対して重要度が重い傾向にあると私は思っている。つまり従業員を大切にするスタンスが存在している。また、導入したいと思っていてもいろいろな壁がありなかなか導入に進んでいない会社も同様の傾向がある。

 さて、事例検討 私が出す事例提供の話題はさほど濃くはない。意図して情報を少なくしている。その方がその会社の実情に合わせやすいからである。受講者がイメージを膨らませやすいようにしている。他の会社の話し合いを自分たちの中で展開すると、「この会社には●●が不足している。」「自分たちの組織ではこのようなことは起こるはずがない。」と結論づけられてしまうことがあるからである。

 事例の奥にある、動いていく人の心理や、悪循環が起きる組織の流れ方などは条件さえそろえば全ての組織・人々の中で起きうるものであるという前提条件がないと、事例検討は上手く進行しない。

 講師として立つときに、こちらが感動するマネージャーもいる。素晴らしマネジメント能力を発揮し、メンタルヘルスマネジメントを動かしているであろうと推察できる。どちらかといえば、自分自身それほど完全にできているとは思っている人はすくなく、さらに自分自身が変化しようと努力している人が多い。

 広い視点で物事をとらえている。一度決めたことは修正はするものの、行動、実行し責任をとる意思もある。部下の気持ちは部下の気持ちとして受け止める余裕はある。こうした内容で事例検討で討論をする。こうした上司がいる職場だといいだろうなと話を横で聞きながら思う。結局はこうしたマネージャーが増えていくことが重要なのである。